プロローグ (1) (2)

第一章 人生の終わり
(1)2013年2月25日 早朝
(2)夢の中で・・・
(3)朝起きると死んでいました。
(4)死神?
(5)死んでも死なない?
(6)葬式の日
(7)生まれ変わっても一緒になりましょう

第二章 本当の終活
(1)神様って本当にいるの?
(2)運命の地図
3)生まれる前に決めてきたこと
(4)運命の地図が教えてくれること

第二章 本当の終活

5 自分の最期を選択する

私は、隣に山積みになっている運命の地図も探ってみた。

どの地図も、母親と父親は同じで私の体も同じだった。

でも、人生最期の結末は、幾つものパターンに分かれていた。

 

中には、もっと早くに死を迎える地図もあった。

苦しみながら迎える死も、悲しい最期を迎える死も悲惨な最期もあった。

逆に、もっと裕福で成功して迎える死も、社会的な偉業を成し遂げて

大勢の人に惜しまれながら迎える死もあった。

 

だけど、主人と出会い、あの二人の娘と人生を共にする地図は、その中のほんの数十枚。

何百枚もある中のたったその数十枚だった。

そして、その地図はどれも62歳で突然死することになっていた。

 

「なぜ、主人や娘たちと生きる人生では、必ず62歳で突然死することになっているの?

他の地図も、人生の終わり方によって、

それまでに出会う人たちや最後に周りにいる人たちが決まっているみたい。」

「そうなんです。よく気がつきましたね。

死というのは、実は、死ぬ人よりも残される人への人生のレッスンが大きいのです。

あなたの死は、旦那さんと娘さん二人、それだけでなく、

あなたのお母様、弟妹、友人。

あなたに関わる全ての人に影響を与えます。

それは、あなたという存在のおかげで保たれていた色んな均衡が一時的に崩れ、

みんなが見ないようにしていたチャレンジに向き合うことになり、

それによって、本来の人生の学びを促されたり、

新しい選択をして、新しい運命の地図へと移行するきっかけになったりするからです。

または、本来の地図に戻ることになるかもしれないのです。

誰と出会って、誰と最期に一緒にいるかで、あなたの寿命も死に方も変わります。」

そこまで説明して、突然レイは、真剣な顔で続けて言った。

 

「あなたは、お孫さんを欲しがっていましたよね。でも、今回の人生では恵まれませんでした。

もし、あなたが望むなら、今からこちらの94歳まで生きる運命の地図を選択することができます。

こちらの地図でしたら、お孫さんを抱っこすることができますし、

94歳まで長生きすることができますよ。

それに、もっと高いレベルであなたの人生の目的を果たすことができます。

きっと、今回の人生より、得るものも大きいはずです。」

「・・・。でも、ここにいる人たちは、主人や娘じゃないんですよね?

姿形が違っているだけ、とかじゃなくて、全く違う存在なんですよね。」

「そうですね。また別の存在ですね。

だけど、それはそれで、その人生になれば、あなたの意識もその人生に同調しますし、

その人生が、あなたの人生に書き換わりますので、

そうなれば、そこがあなたが生きている世界になります。

だから、旦那さんや娘さんがいた人生のことは忘れて、その世界はなかったことになります。

新しい家族と暮らしていれば、その人生で出会った人に愛情もわくと思いますし、

学ぶことも多いと思いますし、

そちらの人生は、そちらの人生で楽しいと思いますよ。

それに、もともと生まれてくる前に決めてきたのは、こちらの地図ですし・・・。」

レイは、まるで私を試すかのように言った。

でも、私はどこかで知っていたのだ。

他の人生はあり得ない、ということを・・・。

なぜなら・・・。

 

「すごく魅力的な誘惑だけど、

私、約束したんだよね。主人と。ここで会おうって。多分・・・。」

 

私はそう言って、2枚目の地図を指差した。

 

「覚えていないけど、そんな気がするの。

そう決めて、前の人生を終えたような気がするの。

こんなにたくさんの地図の中に、主人と一緒になる地図もちゃんと準備していたってことは

神様も応援していくれていたっていうことでしょ?これって、気のせい?」

 

レイは、更に真剣な顔でこう言った。

 

「でも、寿命が短くなりますよ? お孫さんも抱けませんよ?」

その言葉に、ちょっと怯んでしまった。でも、私の気持ちは変わらなかった。

 

「たとえ寿命が短くなろうが、悲しい最期を迎えようが、

みんなと一緒だったこの人生が最高に幸せだったからいい! それでも。」

「あんなに苦労して、あんなに大変な思いをしたのに?」

「うん。全部ひっくるめて、幸せだったからね。

起こった出来事よりも、私にとっては誰と一緒にいたかが大切なの。

みんなと出会えない人生なんて考えられない。」

レイは、少し涙ぐみながら笑って言った。

「あなたって人は・・・。この人生で出会った、

全ての人を愛していたのですね。」

「そうね。一人たりとも出会いを逃したくないくらいに。」

「そうですか。では、この地図のこの時に行って、忘れ物を取りに帰るよう、彼女に伝えましょう。

でないと、地図上をそのまま進んでしまうかもしれませんから。

彼女、忘れ物を取りに帰るかどうか、相当迷っていたでしょ?

この時のあなたは、この1枚目の地図の上にいるのですから、

目的の地図に移行するためには、間違いなく忘れ物を取りに戻って、バスに乗り遅れてもらわないと。」

「そうね。確実にバスに乗り遅れてもらわなきゃね。

でもなんだか、過去と現在と未来がごちゃごちゃで、

訳が分からなくなってきちゃった。」

「そうでしょうけど、それはしばらくしたら慣れますから、とにかく行きましょう。」

「うん、そうだね。ではお願いします。」

私は、そう言って大きく深呼吸し、静かに目を閉じた。

 

目を閉じると、この人生で出会ったみんなの顔が目に浮かんできて、胸がいっぱいになった。

そして、たった今、自分がした決断への感謝が湧いて来た。

「ああ、この死は、私が自分で選んだのか。みんなに会うために。」

そう気づくと今回の人生がより愛おしくなった。