プロローグ (1) (2)

第一章 人生の終わり
(1)2013年2月25日 早朝
(2)夢の中で・・・
(3)朝起きると死んでいました。
(4)死神?
(5)死んでも死なない?
(6)葬式の日
(7)生まれ変わっても一緒になりましょう

 

第二章 本当の終活

え?神様って本当にいるの?

レイは、取り出したマニュアル書の最初のページをめくってこう言った。

「えっと・・・これから、テルさんの人生を振り返りながら、

この人生の学びを深めていくんですけど、

それに先立ちまして、まずは、マニュアルどおり、神様に会いに行きますね。」

「え? か、神様に?い、今から?」

「はい、そうですけど、何か?」

そりゃあ、死んだら神様のところへ行くんだろうな・・・とは思っていたけれど、

こんなにあっさり会えるなんて思っていなかったし、

その前に三途の川を渡ったり、閻魔様の前でこの人生をジャッジされたり、

それで晴れて天国への切符を手に入れてから、神様にはやっと会えるのかな・・・と思っていたので、

こんなにも簡単に会える神様なんて・・・。ちょっと楽すぎない?

そもそも、神様が本当にいるのか、存在自体も怪しい・・・と思ってしまった。

それで、念のために彼の顔色を伺いながら、一応聞いてみたんだ。

「あのー、今更こんな事聞くと怒られるかもしれないけど・・・。

でも、誰でも一度は思うことだと思うから、一応聞くね?」

「はい。何でもどうぞ。」

「あのさあ、神様って本当にいるの???」

「え・・・? 今なんて言いました?」

「だから、神様って、本当にいるんですか?」

「っええーーーーーー! まさか、神様なんていないと思っているんですか? 本当に??? 」

彼は、呆れたような顔で私を見て、続けた。

「だって、毎年毎年神社に行って、お願い事していましたよね?

五円玉入れて、10個も20個もお願い事していたじゃないですか! 」

「10個も20個もって!! いや、私、そんなに厚かましくないよ。

五円玉入れて、2、3個お願い事していただけだよ。

でも、それとこれとは話が別っていうか。

信じていないわけじゃないけど、見たこともないしね。

ほら、死んでからも、三途の川を渡ったり、閻魔様にあったりしたら、

だんだん、神様もいるのかもなーって信じられると思うけど、

いきなり神様に会えるなんて思ってもなかったから、なんか実感がわかないっていうか・・・。

本当のところ、よくわからないのよ。」

「あのですね、これは、信じるとか信じないとかいう話ではないんです。

だって、存在するのは真実なので。

これは、宗教とか信仰とかとは、全く別のお話です。

この宇宙の真理なんです。

だって創造主ですよ? 創造主がいないのに、どうやって自分たちができたと思っているのでしょう???

全く、人間はみんなそうです。

本当は、みんな知っているんですが、知らないふりをしている。

人間のエゴがそうさせているんですけどね、実はそれが人生を不幸にする一番の理由です。

なぜなら、この真理は、あなたという存在にも深く関わることだからです。

あなたが本当は何者なのか、その真実がそこにあるからです。

だから、人生のいろんな場面であなた方が神様を知るきっかけをつくるのです。」

「そ、そんなこと言われても・・・。

自分が何者かなんて、考えたこともなかったし、

そこに神様が関わっているなんていうことも知らなかった。

じゃあ、あなたは、自分が何者なのか、その答えを知っているというの?」

「はい。知ってます。ま、一応ガイドなんで・・・。

そっか、そこからですか。そうなるとガイドの手順が変わってきます。

神様を信じていないとなると、これから会いに行くことは不可能なので・・・。

となると、ちょっと変更しなきゃな。ちょっと待っててくださいね。」

レイは、そう言って、ガイド本のページを行ったり来たりしてガイドの手順を確認し始めた。

一人でぶつぶつ言いながら、時々空中をみては、

指をくるくる回したり、指差しをしたりして、頭の中を整理しているようだった。

どうやら、私が神様を信じていないから、予定していた人生の振り返りツアーは、

かなりの変更を余儀なくされるようだ。

( なんか、神様がいるのは、知ってて当たり前っていう前提で話が進んでいるけどさ、

多分、死んだ人の90%は、私と同じ反応だと思うよ。

いや、いることはいるんだろうなと思っているけど、

神様がどんな存在で、どんな格好をしているのか知らないから、

イマイチ信じられないんだよね。)

っと、心の中で弁解しつつ、神様のこともそうだけど、

実は自分のこともよくわかってないんだな、と初めて自覚した。

自分が何者かだなんて考えたこともなかった。

生きているときは、体があって、自分の性格や姿格好、職業、好きなことが私のアイデンティティを作っていて、考え方や価値観が私のキャラクターを生み出していた。

それが自分だと信じていた。

でも、死んでからの私は、生きていた時ほど自分の性格や価値観に縛られていない気もする 。

自分のキャラクターがよくわからなくなった。

もしかしたら、あの着ぐるみと一緒に、この人生で身についていた考え方や価値観や性格も一緒に脱ぎ捨ててきてしまったのかもしれない。

だから、死んでしまった私が、何者なのかなんて尚更わからない。

で、それが神様と、どういう関係があるわけ?っと一人であれこれ考えていたら、

やっとプランが決まったようで、レイに笑顔が戻った。

「おまたせしました! ふう、プランの練り直し終わりました。

本当は、一番最初に神様に会ってからツアーを始めるんですけど、

信じていないと神様には会えないから、

最後の最後にご対面してもらうプランにしました。

なので、神様に会うのは最後の楽しみにとっておいてください!」

「わ、わかった。それまでには、神様の存在を信じられるようになってると思う。」

「はい。きっと、そうなってると思います。

それに、自分が何者かもわかっていると思います。だから、大丈夫ですよ。」

レイが、そう言ってにっこりと笑ってくれたので、私は安心した。

「それじゃあ、これから、人生の終活の旅に出かけます。

本当の終活はこれからです。

この人生をもう一度振り返り、この人生に愛を注いでほしいのです。

そのための振り返りツアーです。」

「この人生に愛を注ぐ・・・。」

「そうです。とても大切な作業です。

これは、この人生の本当の終活です。

これを避けて通ることはできません。

どんなに苦しくても。

死を迎えるためではなくて、次の人生へと進むための終活です。

準備はいいですか? 出発しますよ。」

私は、ちょっとドキドキした。

私のこの人生では、やり残したこともたくさんあったし、思いどおりにいかないこともたくさんあったし、

傷ついたことも、納得がいかなかったこともたくさんあった。

それを振り返るのかと思うと、ちょっと怖くなったし、逃げたくもなったけど、

レイがいてくれるから大丈夫だろうと、なぜかそう思えた。

「わかった。いつでもどうぞ。」

私は力強くそう言って、ピンっと背筋を伸ばした。