命の約束 第一章 人生の終わり(4)死神?

スピリットファースト

 

第一章 人生の終わり

4.死神?

霊安室で私は、目の前に横ったわっている自分をずっと眺めていた。

ずっと自分の体を見ていたら、私本当に死んじゃったんだ、とまた悲しくなってきた。

そこに横たわっている体はまるで、脱いだ着ぐるみのような気がして、

そんな着ぐるみがだんだん恋しく愛おしくなって、

愛着があるその着ぐるみを脱がなきゃならなくなったことが、

なんだかとてつもなく寂しくて泣けてきた。

そんなに気に入っていた着ぐるみじゃなかったのに、

脱いでしまえば、こんなに愛おしくなるものなんだな・・・。

 

着ている間は、不自由に感じていた着ぐるみも、今となっては、あの感覚が懐かしい。

重苦しくて不自由ではあったけれど、

至る所にガタが来て思うように動かない体だったけれど、

大切な人に触れたり、肌で風を感じたり、太陽の暖かさを感じたり、

水の冷たさを感じたり、歌を歌ったり、笑いすぎてお腹が痛くなったり、

腹が立って血が逆流したり・・・

そんな感覚がもう味わえないのかと思うと

初めて着ていた着ぐるみへの感謝が湧いてきた。

 

「もっと大切にしとけばよかったな・・・」

 

愛おしさでそう思ったけれど、気づくのが遅すぎた・・・。

今はもう、自分の体に触れることもできない。

もっと早く気づいておきたかった。

 

「これから、私はどうなるのだろう・・・」

自分の死を受け入れると、今度はそんな不安がこみ上げてきて、私はまた怖くなった。

本当は、死への恐怖は、生きている間に感じておくことだったのだろうけれど、

私にはその時間がなかったから、今になって死への恐怖が襲ってきたのだ。

ただ、死んだら消えて無くなるという恐怖は持たずに済んだ。

今この瞬間、私は間違いなく消えずに存在している。

それが、せめてもの救いだった。

 

これからどうしていいのかもわからず、

横たわっている自分の体を見ながら、不安だけが大きくなっていく。

 

「そういえば、叔母たちは、天国まで連れて行ってくれる人が現れるって言っていたよね。

いわゆる死神っていうやつかしら・・・。死神だったら、なんか怖いな。」

 

とそう思った次の瞬間、突然後ろから・・・トントン・・・っと肩を叩かれた!!

あまりに突然だったから、私は飛び上がってびっくりした。

 

「え?え?え?! 今の誰?」

 

私は、怖くて凍りついた。ま、まさか、死神? とうとう死神が迎えに来ちゃった?

黒いフードを被ったドクロのような顔をした恐ろしい死神の姿が頭に浮かんで、背筋がゾッとした。

あまりに怖くて私はすぐに振り返ることができなかった。

振り返ったところにあの恐ろしい形相の死神が立っていたら怖いでしょう?

 

「あのー、大丈夫ですか?」

 

怖くて固まっていると、今度は、声をかけられた!!! 若い男の人の声だ。

あれ? でも死神にしては、えらく若くて優しくて親切そうな声。

死神って、大きな鎌を持っていて、もっとおどろおどろしいイメージだけど、

この声は、全然そんな感じじゃないな。

死神じゃないのかな・・・。死神じゃないなら、誰が声をかけてきたんだろう?

もしかして幽霊? ここは霊安室だし・・・。

だとしたら、お仲間だけど、でも見知らぬ人の幽霊とか、それはまた違った意味で怖すぎる・・・。

 

私は、今の状況があまりにも怖すぎて、なかなか振り返ることができずにいた。

「あのー、聞こえてます? 大丈夫ですか?」

怖くて凍りついている私に、その人は、しつこく声をかけてくる。

無視しても、何度も声をかけてくるっていうことは、

やっぱり、この人が叔母たちが言っていた天国まで連れて行ってくれる人で、

今、迎えにきてくれたのだろうか?

 

このままずっと、後ろから声をかけられるのも怖いし、

ここにずっといちゃいけないのも分かっている。

振り向かないと先に進めないな・・・。

私はそう思い、勇気を出して振り返ってみることにした。

背筋をピンと伸ばし、大きく深呼吸して、恐る恐る後ろを振り返る。

 

そこは、霊安室の壁のはずだった。

だけど、その壁は消えて、目の前にはシュッとした若い男性が立っていた。

美しい青年だ。

その青年は、白いスーツでビシッと王子様のように立っていたから、

おばちゃんの私でも、ちょっとドキッとした。

 

「大丈夫ですか? 状況、飲み込めました?」

「じょ、状況? ええ、まあ、なんとなく・・・」

 

言葉を交わしてみると、どうやら怖い死神ではなさそうだと安心した。

 

「もしかして、あなた、私を迎えに来てくれたの? イメージとは違うけど、死神さん?」

いや、死神にしては、爽やかすぎるな・・・そう思いながらも聞いてみた。するとその青年は、

「あーーいえいえ、そう呼ぶ人もいなくはないですが違います。

死神ではないですが、あなたを迎えにきました。

あ、突然すみません。挨拶もなしに・・・。

実は、私は、こういうものです。」

彼は、そう言って丁寧に挨拶し、名刺を差し出してきた。

名刺と言っても、透明でうっすら白く光っている不思議な名刺だ。

そこには、こう書いてあった。

あなたのガイド   レイ 

「ガイド? ガイドって、色々と案内してくれるあれ?

やっぱり、叔母たちが言っていたのは本当だったんだ。」

「はい。そうです。私は、あなたのガイドです。

テルさん、お名前も確認済みですよ。

これから、あなたをしかるべきところへご案内するためにやってきました。」

 

本当にお迎えって来るんだ。

叔母たちは、怖がらずについていくように、って言ってたよね。

「あなたが、私のガイド? 私を天国まで連れて行ってくれるんだね。」

「あ、いえ、行き先は天国ではないんですけどね、まあ、似たようなところです。

これからご案内する旅は、あなたが本当に自由になるために大切なことです。」

「天国じゃないけど、似たようなところ? 自由になるための旅? よくわからないんだけど」

「そうですよね。突然亡くなって戸惑うこともあると思いますし、

死後のことはわからないと思いますので、

これから死後の世界をご案内します。

何か分からないことがあれば何なりとお尋ねください。

どんな質問にも誠心誠意お答えしますので。」

「わからないことがあれば何でもって・・・。

分からないことだらけで、何から聞いていいかが、わからないんですけど。

それに、あなたは、なんでも知っているの?

どんな質問にも答えられるんですか?」

「神様みたいに全部が全部を知っているわけではないのですが、

いわゆるマニュアル的なものがありまして。

それを見れば全てお答えできますし、

神様に直接聞けば、速攻で答えが返って来ますので、

まあ、神様との橋渡し役とでも考えてください。」

神様とか、ガイドとか、なんか西洋風で聞き慣れないんだけど、どこの宗教の人だろう?

私、日蓮宗だったけど、死んじゃうとそういうのも関係ないのかな・・・。

そう言えば、お坊さんは、死後の世界のことも話してくれていたけど、

だとしたら、私はこれから四九日かけて黄泉の国へ旅することになるだろう。

そこまで、ガイドをしてくれるのだろうか?この人は。

私は、もう一度どうするべきか考え込んだ。

こんな突然やってきた若者を信じてもいいのだろうか?

でも叔母たちは、信じてついていくように・・・って言っていたしな・・・。

ウダウダ考え込んでいる間に、私の体は、一旦自宅へと帰ることになった。

私も、一緒に帰るつもりで病院から運び出される自分の体の後に続いて部屋を出ようとすると、

そのレイとかいうガイドが、私を引き止めた。

 

「あ、テルさん、あなたはついて行かなくて大丈夫ですよ。一緒に移動しましょう」

「え? 一緒に?」

私は足を止めて、レイの目をみた。この人を信じていいものか。

でも、他に頼る人はいない。私は、彼に確認した。

「これから家に帰れるんだよね?」

「はい。間違いなく。すぐに帰ることができます。」

その目は嘘をついている目ではなかった。

叔母たちも言っていたし、私は彼を信じてみることにした。

「わかった。それじゃあ、家に連れて帰って。」

「よかった、信じてくれて。ありがとうございます。

それでは、ちょっとの間、目を閉じてください。

着いたら声をかけますので、それまで目を開けないでくださいね。」

私は、黙ってうなずいて、言われるがまま、ゆっくりと目を閉じた。

メンタル・ライフコーチ 大津 真美

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長崎大学教育学部小学校教員養成課程(教育心理学専攻)卒業後、福岡県久留米市内の精神科病院にて心理士として一年半勤務。その後、セラピストとして10年活動しイン...

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