命の約束 第1章 人生の終わり(2)

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第一章 人生の終わり (1)2013年2月25日 早朝

第一章 人生の終わり

夢の中で・・・

恐る恐る目を開けると、私はいつもの夢の中にいた。

どこまでも続く花畑。

いくつもの小さな丘が遠くまで広がって、色とりどりの花が地平線まで広がっている。

よく夢で見る慣れ親しんだ景色だった。

 

「なんだ。やっぱり夢か。よかった!」

 

私は安堵して、美味しい空気を吸おうと大きく深呼吸をした。

花の香りが肺を一杯に満たす。いい香りだ。

 

ただ、いつもと違うのは、少しモヤがかかって薄暗く肌寒いということだけ。

いつもは、雲ひとつない青い空が広がっているのに、今日はなんとなく薄暗かった。

 

私はまた一瞬で不安になって、他にいつもと変わったところはないかとあたりをぐるりと見渡してみた。

すると、遠くの方に一本の木が見える。

 

「あれ、あんな木あったっけ?」

 

小さな丘の向こう側に見えるのは、真っ直ぐに天に向かって伸びる杉の木のようだった。

お花畑に一本だけ立つ見覚えのないその木が気になって、私はさらに不安になった。

 

ふと足元を見ると、道が、その木の方へ伸びている。

私は、その木に呼ばれているような気がして、一歩を踏み出した。

「とりあえず、行ってみよう」

不安に駆られながらも、そこに何かがあるという期待を胸に、私は一本道を歩き始めた。

 

小さな丘をいくつか越えてしばらく歩くと、その木が周りの丘よりもちょっと高いところにポツンと立っていることに気づいた。

私は、他の丘よりもちょっとだけ急な坂道をゴール目指してゆっくりと登って行った。

やっと丘を登り切るとそこには見覚えのある人が二人立っていた。

 

「おばさん?」

木の下に立つその二人が、ずっと昔に亡くなった二人の叔母であることがすぐにわかった。

一人の叔母は、命日の前になると必ず夢に出てくるからよく夢の中で話していたが、

もう一人の叔母は、これで2回目だった。

 

確か2週間前、この二人が揃って夢に出てきたっけ?

二人揃って出てくることなどこれまでなかったから、

私はとても不思議だったのだ。

職場の人に不思議な夢を見たとそのことを話してみたら、

「元気にしているか会いにきたんじゃない?」

と言っていたが、私は何となく、

何かを知らせにきたんじゃないかと思っていた。

 

木の下まで行くと、

懐かしい二人の叔母たちが笑顔で迎えてくれて、こう言った。

 

「テルちゃん、突然でびっくりしたでしょう?

きっと一人じゃ、何が起こったのか分からないだろうと思ったから迎えにきたんだよ。」

「テルちゃん、大丈夫? でも、もう心配ないからね。私たちがついているから。」

 

二人の叔母は、再会を喜んでいるように見えた。

確かに二人に会って話せるのは嬉しいけれど、

この二人と話ができるということは、

やっぱり私は死んでしまったのだろうか?

 

不安はさらに大きくなって、恐怖で胸がいっぱいになった。

「もしかして私、本当に死んじゃったの?

冗談じゃなくて? 夢でもなくて?

本当の本当に、死んじゃった?

もう戻れないの?

まだ、たくさんやりたいことあったのに。

何の準備もしていないのに。

どうして、こんなことになっちゃったんだろう」

 

叔母たちの優しい笑顔を見て、懐かしい声を聞くと、

一気に恐れと不安が込み上げてきて、

私はもう我慢ができずに、子どものように泣き出してしまった。

 

「どうして、こんなに突然?

私なにか悪いことした?

誰にも何にも伝えられずに死んじゃったなんて。

ありがとうも、さよならも言えなかったよ」

「かわいそうに。そうだよね。

突然だったから何の準備もできずに、

みんなにお別れも言えずに来ちゃったんだよね。かわいそうに」

二人の叔母は、私を抱きしめて頭を撫でてくれた。

私は、木の下で二人に抱き抱えられながら立っていられないほどに思いっきり泣いた。

 

「何も病気なんてなかったのに。

具合も悪くなかったのに。

昨日の夜は、普段通りに寝て、またいつものように朝が来て起きるつもりだったのに。

今日、やろうと思っていたこともあったのに。

明日も明後日も、まだまだやりたいことたくさんあったのに!!

なぜこんなことになったんだろう。」

 

私は、泣きながらずっと、そんなことを二人の叔母に言い続けた。

叔母たちは、ずっとずっと私の気持ちを聞いてくれて、

泣きじゃくる私を慰めてくれた。

 

叔母たちの胸の中で泣いている間に私は、

絶望と悲しみと不安と恐怖を

涙と子どものような泣き声と一緒に吐き出していった。

すると少しずつ心がスッキリしてくるのを感じた。

それと同時に心の奥から温かい優しい気持ちが溢れてきて

次第に安心感に満たされ、

安心した私はだんだん意識が朦朧としてきて眠くなってきた。

やがて、叔母たちの声がだんだん遠くなっていって、

私の意識は深い眠りへと落ちていった。

 

眠りに落ちた私は、ふと気づくと大きなスクリーンの前に座っていた。

そこは、よく行く映画館だった。

夢なのか現実なのかよくわからなかったが、

映画の上映が始まると、それが夢だということがすぐにわかった。

夢の中で夢を見ているのは、不思議な感じだったけど、

そんなことすぐに忘れて、私は映画に夢中になった。

大きなスクリーンに映し出された映画は、

なんと幼い頃からこれまでの私の人生だったのだ。

私は自分のささやかな人生の物語を観客として見せられ、

胸が温かくなったり、キュッと苦しくなったり、

楽しくなったり、腹が立ったり、ドキドキしたり、

悲しくなったり、そして最後は、

愛おしくなって気づいたらまた、涙が溢れて泣いていた。

名もない一人の女の人生だったけれど、

意外とドラマティックで感動的な一生だった。

映画が終わりに近づくとエンドロールが流れて、

この映画に登場したキャストの名前が流れ始める。

一番最初に流れてきたのは、もちろん私の名前だった。

名前の上には、「主演」と書かれている。

それを見て、この人生が一つの長い長い映画に過ぎなかったのだと悟った。

そして、さらに後に続くキャストの名前を一つ一つ見ながら、

この人生にどれだけの人が関わってくれていたのか目の当たりにし、

一人一人の顔を思い浮かべながら、愛おしくてまた涙が止まらなくなった。

 

でも、その涙はもう、絶望の涙ではなく、感謝と愛の涙だった。

たくさんの後悔もあったけれど、

突然終わってしまった人生でやり残したこともたくさんあったけれど、

こうして一つの物語として観るといい人生だったなって思えた。

そんな温かい気持ちに包まれて、私はやっと落ち着きを取り戻していった。

 

「テルちゃん、テルちゃん、起きて」

遠くから、優しく私を呼ぶ声が聞こえて、私は意識を取り戻した。

ゆっくりと目を開けると、私は二人の叔母に抱き抱えられて、木の下に横になっていた。

叔母たちが私の顔を覗き込み、こう声をかけてくれた。

 

「テルちゃん、少し落ち着いた? もう大丈夫? 」

「うん、だいぶ落ち着いた。さっき、夢で自分の人生の映画を見せてもらったの。

なかなかいい映画だった。

まだ、すごく怖いけど、でも、なんか大丈夫な気がする。」

「うん、それはよかった。

残念ながら元には戻れないけれど、

でも死は思ったほど怖くないから大丈夫だよ。」

「ほら、今はどこも痛くないし、苦しくないでしょ?」

「そうだね。どこも痛くないし、そういえば、苦しくもないね。

これから、叔母さんたちはずっと一緒にいてくれるの?」

そう私が尋ねると、叔母は急に悲しそうな顔をした。

「テルちゃん、ごめんね。それはできないの。

あなたが少し落ち着いたから、私たちの役目はもう終わり。

テルちゃんは、これからやることがあるから、私たちはここで一旦帰らなきゃ。

テルちゃんは、これから大切な旅が始まるからね。」

「え? 行っちゃうの? 私、また一人になっちゃうの? もう会えないの? 」

「いっときのお別れだよ。あなたの旅が終わるまで。

旅が終わればまたいつでも会えるから、呼んでね。

すぐに駆けつけるから。

それに一人じゃないよ。私たちは、いつでも見守ってる。だから大丈夫。」

「それにこれから、テルちゃんが天国へ行くのを助けてくれる人がちゃんと現れるから、

心配せずにその人について行くんだよ。」

 

不安そうな私に、叔母たちは笑顔でそう言うと、私にもう一度目を閉じるように言った。

私は、まだ叔母たちと一緒にいたかったけれど、

やっぱりこれは夢であって欲しい・・・、

全部、悪い夢だったって、笑って朝ごはんを食べたい・・・と、

まだどこかで思っていたのか、微かな期待が頭をよぎり、夢から醒めたいと思った。

それで、そんな淡い期待を胸に叔母たちに促されるまま、もう一度目を閉じたのだ。

 

さあ、きっと夢はもう終わりだ・・・。

 

メンタル・ライフコーチ 大津 真美

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長崎大学教育学部小学校教員養成課程(教育心理学専攻)卒業後、福岡県久留米市内の精神科病院にて心理士として一年半勤務。その後、セラピストとして10年活動しイン...

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